研究概要 |
本研究課題における目的は、大域的原子核質量模型を用いて原子核の崩壊様式の大域的計算を行い、原子核がどこまで存在しうるか、また有限であればどこまで核種数が存在しうるかを調べ、その性質を明らかにすることである。 本課題における理論計算に用いるKTUY質量模型は、まず球形原子核の基底を計算し、つぎに任意の原子核(一般に変形している)について球形基底の原子核形状に対応する配位混合計算を行うことにより原子核質量を与える。具体的にはまず大域的核種領域に適用可能な球形単一粒子ポテンシャルを用意し、得られる球形単一粒子準位を用いて球形基底計算の元となる球形殻エネルギーを作成する 平成19年度は上述の核種領域における原子核質量計算の内、球形殻エネルギーの計算を行った。この基底として用意する原子核領域を陽子数Z=540,中性子数N=800まで拡張した計算を概ね完成させた。従来はZ=270,N=400までとしていたので、領域を4倍拡張したことになる。 これにより研究課題の目的に該当する広域の核種に対して、任意の形状の殻エネルギー計算を行うことが可能となる。 また、並行して、従来の某底空間のみを用いて中性子数N=228を越えた閉殻構造の周期性について調べ、次の閉殻中性子数としてN=308が有力であるという事を示した。 また、天体核研究との関連では、未知超重中性子過剰核におけるβ崩壊遅延核分裂率を本模型計算により用意し、原子力機構で進めているr過程元素合成計算に用いる理論核データとしての提供を行った。その結果、r過程に対するβ崩壊遅延核分裂の程度は、用意する核分裂障壁の理論予測値がいくつかの原子核質量模型間でかなりの隔たりがあり、模型依存性がかなり大きい事が分かった。
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