研究概要 |
本研究課題における目的は、大域的原子核質量模型を用いて原子核の崩壊様式の大域的計算を行い、原子核がどこまで存在しうるか、また有限であればどこまで核種数が存在しうるかを調べ、その性質を明らかにすることである。 本課題における理論計算に用いるKTUY質量模型は、まず球形原子核の基底を大域的核種領域に適用可能な球形単―粒子ポテンシャルを用いて計算し、つぎに任意の原子核(一般に変形している)について球形基底の原子核形状に対応する配位混合計算を行うことにより原子核質量を与えるものであり、核種領域によらずに計算可能となるように開発されたものである。 平成21年度は前年度までに、計算可能な核種領域に対しで原子核質量の計算を行った。閉殻構造に関しては中性子数N=228を超えて,N=308に比較的顕著な閉殻構造が生じ、その周期性が保たれている。一方陽子数Z=126を超えた場合はZ=164が次の閉殻であるがその閉殻性は比較的小さく、周期性も弱いという理論計算結果を得た(目的(3)に相当)。また、α崩壊、β崩壊、陽子放出、自発核分裂の4崩壊の部分半減期を計算し、図表化を行った(目的(1)に相当)。そしてこれらの部分減期を用いて原子核の存在核種数の推定を行った。その結果1ナノ秒以上の全半減期を持つ核種が一万一千核種程度、1マイクロ秒以上の核種が一万核種程度、1ミリ秒以上で八千核種程度、1秒以上のものが約四千核種程度という結果となった。これを踏まえ、原子核の存在領域は陽子数Z=170-180程度、中性子数=330程度までか含む領域であるという結果を得た(目的(2)に相当)。また、その核種領域の境界は概ね自発核分裂の短寿命性が与えていることを示し、自発核分裂の性質が原子核の存在領域に大きく影響を与えているという結果を得た。
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