無分散リングにおいて3次元レーザー冷却法によりクリスタルビームが生成できるとを分子動力学シミュレーションにより示した。シミュレーション条件として蓄積リング「S-LSR」のラティス構造を想定し、実際にレーザー冷却実験に用いられている40keVの24Mg+イオンビームに対して縦方向の冷却力が3自由度に均等化されるよう結合空洞電場やソレノイド磁場等のラティス条件を最適化した。波長が約280nm、スポット径が1cmのレーザーを2本用いて初期温度が数万Kのビームをレーザー冷却したところ、ビーム電流が十分低い場合、エミッタンスは1e-12m. radへ運動量幅は1e-6へそれぞれ高品質化され、バンチ内の粒子が直線状に整列する安定な1次元結晶構造を形成できた。このとき、掃引後のレーザー周波数離調の最適値はドップラー限界を与える理論値よりも3倍程度大きいこと、3次元冷却が可能な共鳴条件下ではシンクロトロンチューンが大きいためレーザーとイオンの相互作用時間を十分確保できるようレーザー周波数の掃引速度を遅くする必要があることなどが分かった。他方、ビーム電流が高い場合、クリスタルビームの維持条件を十分に満たすことができないため結晶化することはできなかったものの、1e-11m. rad台の超低エミッタンスビームを生成できた。 クリスタルビームの引き出しについては静電場によるバンチ全体を一度に引き出すシングルターン引き出し方法を想定した。ビーム輸送系のべ一タトロン位相進度を変え、クリスタルビームのエミッタンス増加や結晶構造の安定性について解析し、安定化のための条件を明らかにした。引き出しの際の偏向角を小さくし位相進度を小さくするほどエミッタンスの増加量を抑えることができ、上述の維持条件と同等に127度以下では大電流時に形成可能な3次元結晶構造を維持できることが分かった。
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