研究概要 |
放射性核種の中性子捕獲反応断面積は原子核物理学・天体核物理学等の基礎科学だけでなく原子力開発の分野でも重要な物理量であるが、測定用試料の入手性や試料からの強い放射能に起因したバックグラウンド等の問題から、全ての核種で必要な精度を達成できているわけではない。本研究課題では中性子ビームを用いた直接測定の問題点を回避して断面積の導出するための代理反応法と呼ばれる手法の開発を、JAEAタンデム加速器で加速した^3Heビームを^<196>Pt標的に照射して断面積が既知の^<197>Au(n,γ)^<198>Au反応を模擬する^<196>Pt(^3He,p)^<198>Au反応を測定することにより行う。 前年度の試験測定から入射ビームが標的以外の物質に照射されることを防ぐ目的で設置したコリメータで生じるバックグラウンドが当初の予想以上に強いと判明したため、本年度はコリメータと入射ビームとの衝突で生じる散乱粒子が荷電粒子検出器に入射しないように改良を行った。また、(^3He,p)反応で生じる散乱陽子を測定するためのSi検出器の製作も行った。改良した測定系を用いた予備実験を行って、散乱粒子に起因したバックグラウンドを大幅に減少させるとともに散乱陽子とγ線の同時測定に成功し、^<196>Pt(^3He,p)^<198>Au反応測定に目処をつけることができた。取得したデータの解析を進めるとともに、本年度の予備測定で得られた結果を元に測定系の最適化を行った後に本測定を開始する。
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