1. 開弦の場の理論のゲージ不変量として開弦場とon-shell閉弦状態との内積(gauge invariant overlap)が提案されている。これをタキオン凝縮に対するSchnabl解について解析的および数値的に計算し、非自明な非零の値が得られることがわかった。一方、開弦の場の理論におけるタキオン凝縮解としては、Schnablの解析解以外にもレベルトランケーション近似によるSiegelゲージ(およびそれを実1パラメータaを持つ形で一般化した浅野-加藤のa-ゲージ)の数値解が知られている。それらに対してもgauge invariant overlapを数値的に評価した。その結果、レベルを上げていくとSchnablの解析解に対する値に近づいていくことがわかった。従来、作用の値はレベルを上げていくとD25ブレーンテンションに近づくことが知られているので、それと合わせると、レベルトランケーションによるa-ゲージの数値解はSchnablの解析解と(解の形はもちろん異なるが)実はゲージ同値であるという期待と整合している。つまり、ここでの結果はSchnablの解析解と様々なaの値に対するa-ゲージの数値解は全て物理的には同じ非摂動論的真空を表していることの証拠を与えたことになる。 2. 2007年に構成されたSchnabl/Kiermaier-Okawa-Rastelli-Zwiebachのmarginal解についてもgauge invariant overlapを解析的に評価し、最近EllwoodがFuchs-Kroyter/Kiermaier-Okawaの解に対して計算した結果と一致することを示した。これは、見た目は異なる2種類のmarginal解が同じパラメータ値のもとでゲージ同値であることを示唆している。以上の結果は、開弦の場の理論だけに留まらず、閉弦の場の理論との関係(あるいはopen-closedの弦の場の理論)をDブレーンを介して議論する場合にも、重要な示唆を与えるものであると思われる。 このように弦の場の理論を直接的に応用することで、超弦理論を見通しよく追究できると期待している。
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