本課題では当該年度の10月迄にLHC加速器の稼働が実現していなかった為、主にシミュレーションによる発見能力評価を継続した。研究の目的にもある高い横運動量を持つ光子を伴った超対称性事象の探索、特に電磁カロリメータ検出器へ斜め入射する事象の基礎となっているのは、提唱されている超対称性模型の一つであるGMSB模型である。ここでは2番目に軽い超対称性粒子が長い寿命を持ち得るという特徴があり、光子の斜め入射を作り出す源にもなっている。同様に長寿命を扱う模型が幾つかあり、それらはLHC-ATLAS実験の初期発見の有力候補として近年特に注目を集めている。本研究では、長寿命粒子探索一般に対象を広げアトラス実験におけるこれらの発見可能性を調査し、初期2年間で得られる1fb^<-1>の衝突事象データで広範囲のパラメータ領域を探索出来ることを確認した。 また11月以降LHC加速器が本格的に稼働し、アトラス実験も衝突事象イベントの取得を開始した。初期データは主に、検出器やトリガーなどを効率よく運転する為に必要となる性能理解・調整に用いられる。本研究でも研究実施計画にあるように、初期データを用いたコミッショニングを開始した。特に低エネルギー荷電粒子の通過に伴う内部飛跡検出器ヒット分布をシミュレーション等と比較し、今後の長期運転に向け検出器理解の向上に貢献した。
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