本研究ではBelle実験によって収集されたデータを用い、B中間子の輻射崩壊B→Xsγ(Xdγ)におけるXs(Xd)を様々な終状態で再構成しそれを重ね合わせるというsemi-inclusive手法を用いた測定を行う。昨年度までの研究で、効果的にバックグラウンド事象を抑制し、信号を抽出するため方針は定まった。本年度は、シミュレーションデータを用いて、寄与が小さいものの無視できないバックグラウンド事象の起源と寄与について調べたあと、実データを用いてB→Xsγの分岐比とCP対称性の直接的破れの測定を開始した。また、系統誤差や理論のモデルから来る誤差の見積もりを行った。しかし、再構成できない終状態の割合などの見積もりに難点があり、最終結果を得るところまでは到達しなかった。これについては引き続き解析を行う予定である。一方で、これまで行われてきたBelle実験は終了したが、ルミノシティを向上して現在の50倍のデータ収集するBelle2実験が平成26年開始を目指して進められており、この実験でのsemi-inclusive手法を用いた輻射崩壊の解析についてのシミュレーション研究を行った。その結果、B→XsγのCP対称性の測定については0.5%以下の精度で、新しい物理への感度があることがわかった。またB→Xdγの分岐比が5%以下の精度で求められることがわかった。しかし、いずれの場合もXs(Xd)の終状態がどのようなものであるかの理論的不定性や、精密測定のための系統誤差の抑制などが課題となるもわかった。
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