平成21年度の間に、B→Kη'γの信号事象の探索結果を論文にまとめ投稿した。6.6億のB中間子対のデータを解析し、対応する荷電モード(B^+→K^+η'γ)の信号を3.3σを超える有意さで確立することに成功したが、残念ながら、中性モード(B^0→K_sη'γ)を観測するにはさらなるデータを要することが分かった。 一方で、7.7億のB中間子対のデータを用い、B→Kφγの信号事象を探索した。対応する荷電モード(B^0→K^+φγ)を約136イベント発見し、9.6σの優位さで再確認した。また、中性モード(B^0→K_sφγ)の信号事象を世界で初めて約35イベント発見し、5.4σの優位さで確立することに成功した。同時に、崩壊の分岐比を、B(B^0→K_sφγ)=(2.66+-0.60+-0.32)×lO^<-6>と決定することができた。この発見により、時間に依存したCP非対称性を測定することが可能となり、平成22年度に向けて、その解析の準備を行った。この成果は、Division of Particles and Fields 2009、欧州物理学会、Lepton Photon O9などの国際会議で報告された。このモードでは、φがBの崩壊点と同じ点で荷電粒子対に崩壊するので、中性粒子であるK_sの(直接測定されない)飛跡に頼る必要がなく、効率よくBの崩壊点を決定し時間に依存したCP非対称度を測定することができるものと期待される。 放射崩壊における光子偏極度に関する学術発表は、その他、数々の国際会議、研究会などで議論された。現行B-factoryで有意な新物理の信号が見られる兆候はまだないが、高度化B-factoryに向けて期待が高まっており、近い将来のLHCによる新しい物理の発見の可能性踏まえて、起こりうるシナリオと準備すべき道筋を精力的に議論した。
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