平成21年度に確立したB^0→K_sφγの信号事象約35事象を含むデータ用い、平成22年度には時間に依存するCP非対称度を世界に先駆けて測定した。結果は、S_<φKOγ>=+0.74(中央値)+0.72-1.05(統計誤差)+0.10-0.24(系統誤差)であった。現段階では誤差が大きいために、標準理論の予想値と矛盾があるとは言えず、新物理の兆候は得られなかった。この結果と解析の詳細について、パリで行われた国際会議ICHEP2010をはじめとする様々な会議で報告し議論を行った。また、論文を近日中に投稿する予定である。 一方で、B崩壊事象中のK_sの飛跡と電子・陽電子の衝突点プロファイルのみを用いたBの崩壊点位置の決定手法の可能な改善について研究を進め、理解を深めた。K_sがたまたまセンサー近辺で崩壊した場合に、飛跡の誤差が大きくなってしまう問題の原因を突き止め、今後の解析ではより精度良く時間に依存するCP非対称度を測定出来るようになった。このような中性粒子の飛跡を用いた解析は欧州で運転中のLHCb実験では遂行不可能な手法であり、日本での遂行に期待が寄せられている。改善された手法は、既存のデータに適用可能であり、B→K_sπ^0γの時間に依存するCP非対称度測定などの解析の準備が進められた。数年後に完成し実験を開始する予定のSuper KEK B-factory計画において精密測定を行い、期待される標準理論からの小さなずれを有意に発見するためには、今回の改善が多いに役立つはずであり、この改善は近い将来この分野における日本の貢献をひとつ高めるための鍵となり得る。
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