研究課題
ストレンジネス(sクォーク)を含む軽い原子核には、陽子と中性子のみからなる晋通の原子核にはない非常にエキゾチックな性質があると期待される。今年度は、そのような原子核の一つ「K原子核」(反K中間子(以下K^<bar>と記述)を含む原子核)を集中的に調べた。「原子核の密度は一定である(密度の飽和性)」という常識が原子核物理にはある。しかし原子核内にK^<bar>が入ると、K^<bar>と核子との間には非常に強い引力が働くため、原子核内部が高密度になる可能性が考えられる。この点においてK原子核は興味深い。また高密度状態はハドロン物理においても重要なトピックであり、その点からも関心がもたれている。このようなK原子核の性質を丁寧に詳しく調べるため、最も基本的なK原子核"ppK^-"(陽子二つと一つのK^-中間子から成る系)をまずは扱う。本年度は1.高密度になった際に重要になる核子間の強い斥力を適切に取り扱え、2.K^<bar>と核子の間の引力を効率的に拾う、模型を完成させた。そしてストレンジネスー1のメソン・バリオン系の説明に成功しているカイラル理論に基づき、理論的に導出されたK^<bar>と核子の相互作用を今回の模型に適用し、変分法による計算を行った。ppK^-の束縛エネルギーは約20MeV、崩壊幅(π中間子を伴う崩壊)は40〜70MeVという結果を得た。この結果は他のグループ研究(現象論的相互作用を使ったもの、Faddeev方程式を解くもの)に比べて、束縛エネルギーが非常に小さく、現在その違いを考察している。
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Nuclear Physics A 804
ページ: 197-206
特定領域「ストレンジネスで探るクォーク多体系」研究会報告(2007年11月26日〜28日、宮城県仙台市)
ページ: 161-169
Modern Physics Letters A(Proceedings of"Chiral07", 2007年11月13日〜16日, 大阪大学Convention Center) (未定)