研究課題
ストレンジネス(sクォーク)を含む軽い原子核には、陽子と中性子のみからなる普通の原子核にはない非常にエキゾチックな性質があると期待される。今年度は、そのような原子核の一つ「K原子核」(反K中間子(以下Kbarと記述)を含む原子核)を集中的に調べた。「原子核の密度は一定である(密度の飽和性)」という常識が原子核物理にはある。しかし原子核内にKbarが入ると、Kbarと核子との間には非常に強い引力が働くため、原子核内部が高密度になる可能性が考えられる。この点においてK原子核は興味深い。また高密度状態はハドロン物理においても重要なトピックであり、その点からも関心がもたれている。近年最も基本的な系であるK-pp(陽子p二つと一つのK-中間子から成る系)が精力的に調べられている。我々の変分法による研究ではK-ppは20MeV程度の束縛であったが、我々の計算にはK-ppと強く結合するπΣNチャネルの寄与が欠落している可能性があった。そこでcoupled-channel complex scaling法(ccCSM)により、結合チャネル及び同時に必要となる共鳴状態の正確な取り扱いを考慮した研究を開始した。まずは二体系KbarN-πYにおいてccCSM法を試し、カイラル理論に基づくポテンシャルを構築し、準相対論的取り扱いを可能とした。これから問題の三体系K-ppに取り組むところである。
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