本研究は、弦理論における非摂動論的励起(ソリトン)であるD一ブレーンを、閉弦の場の理論を用いて記述し、その性質を深く理解することを目的としている。とりわけ、今年度の課題は超対称な弦の場の理論の構築である。主要な研究成果は次のようにまとめることが出来る。 1. 光円錐ゲージの閉弦の場の理論の超対称化を考察した。この理論の作用の相互作用点に、世界面理論の超対称カレントが挿入されているのであるが、散乱振幅を計算すると、振幅のmoduli空間上で、これらが衝突する点において余計な発散が生じることが問題になっていた。我々は、振幅を時空の次元dの関数とみなして、dを大きく負にずらすことによりこの発散を正則化出来ることを見出した。さらに、外線がNS-NS弦の場合に、tree level振幅を実際に計算し、dを臨界次元10に解析接続する際には余計な項が生ぜず、従って、弦の場の理論の作用に相殺項を付け加える必要がないことを示した。 2. 上で、dを非臨界次元からずらすため、正則化の段階では非臨界弦を考えていることになっている。上の理論は光円錐ゲージにゲージ固定した理論であるが、これのゲージ固定を外した超弦理論が存在するかどうかという問題を考えた。我々は、この問題を世界面上の理論として取り扱った。10でないdについて、d組のボソンとフェルミオンの組により、Virasoroの中心電荷が10になるような超共形場理論で、かつ光円錐ゲージをとると、d光円錐ゲージ超弦理論の世界面上の理論になるものを構成した。我々はこの理論のエネルギー-運動量テンソルを求め、OEPを同定し、相関関数を求めた。この理論と通常のゴースト場の理論を組み合わせて、冪零なBRST電荷を構成し、さらに、1.で求めた超弦の場の理論のtree level振幅をBRST不変な形に書き換えることが出来ることを示した。
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