LHC加速器とATLAS検出器は、2008年夏に実験を開始する予定であったが、加速器の故障により、2009年から実験を開始することとなった。そのため、本年度に予定していたデータ収集を行うことができず、結果的にモンテカルロ・シミュレーションを用いた研究を続け、イベント再構成プログラムのさらなる性能向上を行うこととなった。 本研究におけるヒッグス粒子探索のための主たるプローブである電子・光子の同定と再構成の研究を重点的に行った。電子・光子の同定ど再構成のためには、電磁カロリメータにおけるエネルギー較正と内部飛跡検出器における飛跡再構成が重要である。したがって、新規にエネルギー較正用のモンテカルロ・シミュレーション・サンプルを生成し、実験初期段階での較正用初期値の精度を向上させた。また、飛跡再構成の性能は、内部飛跡検出器の物質量に大きく左右されるため、精度の良い検出器のジオメトリーを用いてモンテカルロ・シミュレーション・サンプルを生成し、飛跡再構成の効率を向上させた。これらにより、電子・光子の同定と再構成の効率が向上した。また、ヒッグス粒子探索における標準模型に起因するバックグラウンド事象、特に直接光子生成過程について、モンテカルロ・シミュレーションによる研究を行った。この研究は発展途上であり、来年度も引き続き行っていく予定である。
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