研究概要 |
LHC加速器とATLAS検出器は、2009年秋から衝突実験を開始し、重心系エネルギー900GeV,2.36TeV,7TeVでの衝突データを取得した。本研究におけるヒッグス粒子探索のための主たるプローブである電子・光子の同定と再構成の研究を、取得した実データを用いて重点的に行った。電子・光子の同定と再構成のためには、電磁カロリメータにおけるエネルギー較正と内部飛跡検出器における飛跡再構成が重要である。まだ積分ルミノシティが低いこともあり、中性パイ中間子の2光子崩壊の再構成とモンテカルロ・シミュレーション・サンプルを用いて、電磁カロリメータのエネルギー較正を行った。内部飛跡検出器については、高ノイズのチャンネル等の較正用データを定常的に取得し、高品質のデータを再構成することに成功した。これらの研究の成果として、900GeVにおける、荷電粒子多重度に関する論文を出版した。今後、7TeVでの衝突データを高統計で蓄積し、データ解析を引き続き行っていく予定である。 また、ヒッグス粒子探索における標準模型に起因するバックグラウンド事象、特に光子を週状態に含む過程について、モンテカルロ・シミュレーションによる研究を行った。我々のデータ解析手法では、さまざまな実験・検出器条件を考慮してモンテカルロ・シミュレーションを行い、実データを理解する方向が強力である。しかし、光子を終状態に含む過程では、量子色力学におけるNLO補正を導入したイベントジェネレータは存在しない。そこで、この過程のイベントジェネレータの開発を行った。クォーク・グルーオンから光子へのFragmentation等、まだ課題は残されているが、今後も開発を続け、実データの解析に使用できるレベルまで引き上げる予定である。
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