本研究の目的は逆運動学の質量欠損分光を用いて弱束縛核の圧縮性を測定することである。密度振動状態として知られているアイソスカラー双極子状態を選択的に測定し、その強度分布から圧縮率の議論を行う。弱束縛核の圧縮性測定はこれまでに例がなく、核構造だけでなく中性子星や超新星爆発の解明に関連するため非常に重要である。 実験手法としては不安定核ビームを液体ヘリウム標的に照射し、アイソスカラー双極子状態からのγ線直接崩壊チャンネルのみを選択的に測定し、質量欠損分光を用いて励起スペクトルを求める。粒子閾値以上の高励起状態になると、ほとんどの場合粒子崩壊を起こすが、1/1000程度の割合でγ線を放出し基底状態に直接崩壊する。崩壊率が少ないため大強度不安定核ビームが必要となるが、2007年より稼働し始めた理化学研究所RIBFを用いれば十分なビーム量が得られる。 励起エネルギーは高分解能スペクトロメータを用いて求められるが、粒子が崩壊γ線の反跳をうけるため、実際のエネルギーより10MeVも違って計測される場合がある。これを補正するためにγ線放出角度を知る必要があり、位置感応型高エネルギーγ線検出器が必須となる。平成19年度はこの位置感応型高エネルギーγ線検出器の設計、開発を行った。具体的には2x2x20cm角柱のBGO検出器の光を、両端からアバランシェフォトダイオードで読出し、その波高比から位置を特定するものである。位置感応型高エネルギーγ線検出器は世界的にも珍しく、独創的なものである。
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