研究課題
本研究の目的は弱束縛核の圧縮性を研究することである。弱束縛核の圧縮性は中性子星や超新星爆発を理解するために必要不可欠なパラメータである。固く束縛された安定核の圧縮性はこれまでに報告がなされているが、弱束縛核については対象となる核が不安定であるため実験の困難さから測定は行われていない。本研究では密度振動状態であるアイソスカラー双極子共鳴を選択的に測定し逆運動学の質量欠損分光を用いて強度分布を得る。これは大強度不安定核ビームおよび高分解能スペクトロメータが必要となり、現状では世界のうちでも理化学研究所RIBFでしかこの研究を遂行することはできない。また、粒子がアイソスカラー双極子状態からの崩壊高エネルギーγ線による反跳をうけるためγ線放出角度を高効率で測定する必要があり、位置感応型高エネルギーγ線検出器が必要となる。本年度は高分解能スペクトロメータであるSHARAQスペクトロメータの性能評価および平成19、20年度に本課題で開発した位置感応型高エネルギーγ線検出器の性能評価を行った。質量欠損分光ではスペクトロメータ自体の分解能が最終的に得られるエネルギー分解能を決めるため、その性能評価は非常に重要である。14Nビームを用いた試験実験においてアイソスカラー双極子共鳴状態を同定するのに十分な分解能が得られると確認された。また崩壊γ線からうける反跳を補正するために位置感応型高エネルギーγ線検出器の位置分解能および十分な効率が得られるかの評価実験を行い、その結果必要十分な性能が得られると確認することができた。これにより大強度不安定核ビーム・高分解能スペクトロメータ・位置感応型高エネルギーγ線検出器がそろったことになり、弱束縛核の圧縮性を研究する方法論を確立することができた。
すべて 2009 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Nuclear Inst.and Methods in Physics Research, A (in press)