本研究では、宇宙のあらゆる方向から降り注ぐX線の背景放射の正体を探るべく、その硬X線スペクトルを精密に測定することが目的である。初年度の平成19年度には、高感度硬X線観測に用いる「すざく」衛星の硬X線検出器(HXD)のデータ解析用の計算機環境を整備し、打ち上げ後2年分の公開データを収集した。各方向の強度ゆらぎの測定はまだだが、年次計画の第一項目である、平均的なエネルギースペクトルは導出できている。第二項目である非X線バックグラウンド推定のスタディを行なうためには、HXDのシリコン半導体の検出器応答等を詳細に熟知しておく必要があるため、JAXA宇宙科学研究本部や広島大学を始めとする研究者との打ち合わせを重ねた。これは次年度も継続する。HXDの装置開発の成果としては、その時刻付け機能については、他の衛星との研究者との議論を重ね、査読論文にまとめている。また、「すざく」衛星HXDの高感度観測のスタディを進めるうちに、銀河系内に多数存在する白色矮星から、これまでに見なかった硬X線信号を発見したので、査読論文にまとめて国際会議等で発表すると共に、NASAおよび埼玉大からプレスリリースも行なった。
|