本研究では、宇宙のあらゆる方向から飛来する謎のX線放射(宇宙X線背景放射 ; CXB)の起源を探るべく、最もエネルギー密度が最大となる硬X線の領域で、CXBのX線スペクトルを精密に測定することが目的である. CXBの分光を行う上で、世界最高感度を誇る「すざく」衛星の硬X線検出器を本研究では用いている. 検出器の感度は、主に、非X線バックグラウンド(NXB)とよばれるバックグランド成分を如何によく推定するか、で決まるため、平成20年度には、硬X線検出器に搭載されたシリコン半導体の検出器応答や宇宙環境についてのスタディを進め、JAXAや広島大学と協力して、その精度を上げるとともに、査読論文にまとめた。平成20年度では、初年度に揃えた衛星データ解析環境を用いて、打ち上げ後3年分のバックグラウンドデータを蓄積・総解析し、CXBの平均スペクトルを約10%の精度で求めることができている. 最終年度には、この結果をまとめると共に、到来方向によってCXBrのフラックスがどう揺らぐか、データを分割した解析をすすめ、その分散から活動銀河核起源説を検証しようと考えており、本年度はその準備のために、各地の研究者との研究打ち合わせを重ねた。
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