研究課題
本研究は、ディスク状半導体量子ドットに閉じ込められた励起子の輻射再結合寿命を時間分解PL測定により実験的に調べ、それを決定する物理的機構を明らかにすることを目的とする。平成19年度は、ディスク状InAs/InP量子ドットにおける励起子の輻射再結合寿命の一般的な振る舞いを明らかにすることを目標として、定常PLスペクトルの測定とアップコンバージョン法による時間分解PL測定を行った。試料のPLスペクトルは、量子ドットの離散的な高さ分布を反映して分裂した複数のピークを示し、これらのピークは温度の上昇に伴ってそれぞれ低エネルギー側にシフトしながら、100K程度で消光することが分かった。低エネルギーシフトはバンドギャップの減少により、消光は非輻射再結合過程により説明された。また、励起強度、励起波長による変化も詳細に調べた。時間分解PL測定では、閉じ込め励起子の寿命を求めた。各PLピークの波長を分光して時間分解測定を行うことで、ディスクの高さと励起子寿命の関係を調べたが、高さが6ML(モノレイヤー)から3MLに小さくなるにしたがって、寿命は1.3nsから1.6nsへ僅かに上昇した。これは、電子波動関数のInP障壁層への浸み出しによるものと推測される。また、寿命の温度依存性は小さく、高さ5MLと6MLのディスクについては、4.2-70Kの温度範囲で1.2-1.7nsの範囲での変化であった。定常PL強度から求まる非輻射再結合過程の寄与を考慮した解析を行った結果、励起子め輻射再結合寿命は40K以下ではほとんど温度変化していないことがわかった。これは、励起子の重心運動がディスク内に制限されていることによると考えられる。強励起下では多励起子状態によるものと考えられる、寿命が0.2ns以内の短寿命成分を別に検出した。
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Physical Review B 76
ページ: 205317-21