本研究は、ディスク状半導体量子ドットに閉じ込められた励起子の輻射再結合寿命を時間分解PL測定により実験的に調べ、それを決定する物理的機構を明らかにることを目的としている。前年度にディスク状InAs/InP量子ドットにおいて得られた閉じ込め励起子の輻射再結合寿命の測定結果の考察を進めるため、ディスク状量子ドットの高さと同程度の井戸幅をもつInAs/InP量子井戸において、同じ法(アブコンバージョン法による時間分解PL測定)を用いて閉じ込め励起子の輻射再結合寿命を調べた。量子井戸(2次元平面内への閉じ込め)の場合、ディスク状量子ドット(2次元と0次元の中間的な閉じ込め)の場合とは異なり、20-60Kの温度範で.輻射再結合寿命は2倍程度の増大を示すことが分かった。これは、励起子の重心運動に許される次元の相違による状態度分の違いによるもので、物理的には輻射再結合の際の数の面内方向成分の保存則によって説明される。また、数モノレイヤーの厚みをもつ類似の系であるInAs/InPナノワイヤにおいてもアップコンバージョン法による時間分解PL測定を行った。この場合は、タイプII型のヘテロ接合に起因する長い励起子寿命と、200ps程度の短時間のPLのブルーシフトを観測した。後者は、電子と正孔の空間的分離に起因する過度的なバンドベンディングによるものである。また、以上のディスク状量子ドットとナノワイヤについては、PL円偏光度の時間分解測定によって、光励起された電子のスピンの時間発展の観測も試みた。
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