研究課題
本研究の目的は、核スピン偏極にともなう電子系の微弱な化学ポテンシャル変化を、単一電子トランジスタを用いて測定することである。前年度の研究結果から、量子ホール系の動的核スピン偏極では、ホールバー型試料の縦横比を大きくし、細長い試料の方が大きな核磁気共鳴信号が得やすいことが明らかになった!そこで本年度は、大きな縦横比を有する2次元電子系のホールバー型素子を作製し、その上にアルミニウム/アルミニウム酸化膜を用いた単一電子トランジスタ素子を作製した。素子を低温に冷却し強磁場を印加して量子ホール状態で実験をおこなった。2次元電子系にバイアス電流を印加し、核スピン偏極をおこなった。しかし、単一電子トランジスタの電流信号には、核スピン偏極の影響があらわれなかった。所望の信号が得られなかった原因として2点考えられる。1つは核スピンの偏極率が低く、検出可能な大きさの化学ポテンシャル変化を引き起こさないことである。単純な計算によれば、我々の単一電子トランジスタで核スピン偏極を検出するためには、数十パーセントの大きな偏極率が必要である。電子系と単一電子トランジスタの結合キャパシタンスを大きくすることで、この問題は解決できる。もう一つは核スピン偏極がホールバー素子の一部に偏在している可能性である。量子ホール効果ブレークダウン現象を用いて核スピンを偏極しているが、ブレークダウン現象が非局所的に生じることが知られており、・核スピン偏極が空間的に一様に生じているかどうか自明ではない。
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Journal of Physics, Conference series (掲載確定)