本年度は、室温以上(〜600K)で電荷・軌道秩序を生じるペロフスカイト型Bi_<1-x>Sr_xMnO_3(x〜0.5)に対して室温で電場の印加を行い、物性の異方性制御を試みた。具体的には試料に電極を作成し、電流-電圧測定による電気抵抗変化、並びに偏光顕微鏡によるドメイン変化の観察を行った。 電流-電圧測定では、電場印加後に電流方向の抵抗が一桁程度小さくなることを観測した。この際、偏光顕微鏡でドメインの変化を観察した所、電場印加前に縞状に入っていた二種類の電荷・軌道ドメインのうち一方のみが発達していることが分かった。これらの結果は、電場印加により電流が流れ易くなるようにMn^3+の3d電子軌道(eg軌道)が向きを変えた為、ドメイン比率が変化し、反射率の異方性を通して観測されたことを表している。また、電場の印加方向を90°切り換えて同様の測定を行ったところ、電場方向切り換え前とは異なる、もう一方の電荷・軌道ドメインの発達が観測された。このことは、電場方向の切り換えによって、再度Mn^3+の3d電子軌道の向きを90°回転させたことに対応付けられる。また、同様の測定を小さな試料に対して行った所、試料表面全体を単一ドメインにすることにも成功した。 さらに、揃った電荷・軌道秩序ドメインの情報を得る為に、放射光X線回折により電荷・軌道秩序に起因したブラッグスポットの観測を行った。この測定からは、電場印加により電気抵抗率の低いc軸が電流方向と平行になるように再配列していることを示唆する結果が得られた。
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