研究概要 |
1.Bi系高温超伝導体における磁化率と比熱から見た超伝導の不均一性 高温超伝導体における超伝導の不均一性の普遍性を検証するために、Bi系超伝導体(Bi,Pb)_2Sr_2CuO_<6+δ>の単結晶を育成し、様々な還元アニールを施すことでホール濃度を制御した試料を用いて、磁場中冷却下での磁化率と比熱の測定を行った。その結果、超伝導体積分率と基底状態での常伝導電子状態密度がホール濃度に強く依存することを見出した。これらの結果は、過去に我々が得ているLa系超伝導体での結果と一致する。したがって、Bi系超伝導体のアンダードープ領域とオーバードープ領域において、試料中で超伝導領域と非超伝導領域への相分離が実現している可能性が極めて高いと結論した。 2.La系高温超伝導体におけるボルテックスゆらぎのμSRによる研究 高温超伝導体の超伝導転移温度T_c以上におけるボルテックスゆらぎ状態の検出を目的として、La系超伝導体La_<2-x>Sr_xCuO_4のアンダードープ領域であるx=0.10(T_c〜28K)においてμSR実験を行った。その結果、100K以下で縦磁場下ミュオンスピン緩和率の増大が観測された。この増大の原因として、アンダードープ領域に特徴的な内部磁場の発達とボルテックスゆらぎの存在による磁場分布の不均一の可能性が考えられる。今後は、x=0.15と0.20における実験を行い、最適ドープ領域とオーバードープ領域においてボルテックスゆらぎ状態の検出を試みる予定である。
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