本研究では銅酸化物高温超伝導体に代表される相関の強い系に対して信頼性の高い有効模型を構築し、物性に対する定性的および定量的評価を試み、相関効果の物性への影響を理解することを目的とした。 希土類化合物は希土類原子のf電子と伝導電子が物性に深く関与することが多く、遷移金属酸化物と比較して有効模型の構築が困難である。そこでf13系である希土類Ybベースの化合物YbAl3に対して、可能な限り調整するパラメータを少なくするという方針のもと、有効模型の構築を試みた。そこでは伝導電子に対してはNearly Free electron法を採用した。ポテンシャルの値はHarrisonのテキストに記載されているものを利用し、電子ガスの分極関数を利用して遮蔽効果も取り入れた。またf電子と伝導電子の混成も球面調和関数を用いてその角度依存性等を詳細に記述した。最終的な調整パラメータはf電子レベルおよび混成の大きさの2種類のみであったが、高エネルギーおよびフェルミレベル付近の構造はバンド計算の結果と大筋で一致した。また本手法は結晶場効果なども容易に取り入れることができるものであり、希土類系の相関効果を議論するための出発点となる模型であると考えている。現在はこの有効模型を用いて、YbAl3における相関効果の物理量への影響について解析している。
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