1.本研究の目的は、2GPa以上の高圧力下での極低温静的磁化測定装置の開発と強相関電子系への応用である。われわれが用いる圧力下磁化測定の方法はキャパシタンス式ファラデー法で、試料が入った圧力容器ごと磁化を測定し、あとから圧力容器の磁化を差し引き、試料の磁化を求める方法である。そのため精度の高い実験を行うためには、圧力容器の磁化をできる限り小さくし、試料空間を広くとることが重要となる。そのことを考慮して、今年度は最大圧力の異なる3種類の圧力容器の設計および製作を行った。一つ目はNiCrAl製ピストン・シリンダー型圧力容器である。この圧力容器の液体ヘリウム温度での目標最大圧力は2GPaである。二つ目はインデンター型圧力容器で、目標最大圧力は3GPaである。三つ目はダイヤモンドアンビルセルで、目標最大圧力は5GPaである。NiCrAl製ピストン・シリンダー型圧力セルおよびインデンターセルについては、今後性能テストを行う。ダイヤモンドアンビルセルについては、キャパシタンス式ファラデー法磁化測定法に必要な試料空間がまだ十分に確保できていないため、設計を見直し製作を進めている。 2.圧力下磁化測定装置の開発と同時に、今年度はつぎの研究も行った。充填スクッテルダイト化合物PrFe_4P_<12>の秩序状態を明らかにするため、Prサイトを非磁性のLaでわずかに置換したLa不純物効果を磁化測定から調べた。その結果、6.5Kの相転移(A相転移)はわずか3%のLa置換で消失し、代わって強磁性秩序が現れることを見出した。今回の結果から、A相と強磁性が競合していることを示唆する。またA相は不純物に敏感であることから、A相転移におけるフェルミ面ネスティングの役割りの重要性が再認識され、A相は4f電子の自由度とフェルミ面ネスティングの両方が関与した新奇な秩序状態であることが分かった。
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