マンガン酸化物は、遷移金属酸化物を用いたデバイスに使用される代表的な強磁性電極材料である。今年度、レーザーアブレーション法で用いるレーザーの光学的条件を制御することで、マンガン酸化物薄膜の組成を精密に制御することに成功した。特に、光学的な条件の制御が、レーザーアブレーション法において重要と信じられていた基板温度、酸素分圧以上の大きな効果を持つことを明らかにした。また、ルテニウム酸化物にマンガンを微量導入した薄膜を、チタン酸化物基板上に成長させ、ショットキー接合を作製した。このようなショットキー接合は、トンネルトランジスタの基本構成要素であり、良質な接合の作製はきわめて重要である。このルテニウム酸化物-チタン酸化物接合において、多彩な特性が現われることで知られる遷移金属酸化物接合でも珍しい、負性抵抗を低温において実現した。さらに、バナジウム酸化物薄膜を、典型的なワイドギャップ絶縁体であるランタンアルミニウム酸化物で挟み込み、厚みの制御により輸送特性がどのように変化をするか調べ、界面において電子状態が再構成する様子を明らかにした。トンネルトランジスタにおいては、絶縁膜の良質化することがきわめて重要である。この目的のために、マグネシア、サファイアの単結晶薄膜をレーザーアブレーション法により作製した。特に、良質な結晶性に加え、薄膜表面の平坦性が、原子間力顕微鏡および反射型高速電子線回折においてほぼ検出限界に迫る高さを持っていることを示した。
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