ペロブスカイト型Ru酸化物Ba_x Sr_<1-x>RuO_3に代表される、強磁性かつ金属的電気伝導を示す酸化物において報告されている異常ホール効果の「異常」の有無およびその原因を明らかにするため、以下の研究を行った。 1. Ba_xSr_<1-x>RuO_3単結晶を作製し、磁気測定、電子輸送測定を行った。その結果、我々が以前薄膜において報告した、(1)60K以下の低温では中間磁場領域で磁化ではスケールできず、約7Tの高磁場では消失する異常ホール効果の余剰項がある。(2)60K以上での異常ホール効果はこれまでの左右非対称散乱メカニズムで説明できる。(3)強磁性相と常磁性相では正常ホール係数・異常ホール係数とも大きく異なる、といった異常ホール効果の「異常」がバルク単結晶でも生じることを明らかにした。以上の結果より、Ba_xSr_<1-x>RuO_3における異常ホール効果の「異常」が、構造歪み、組成変調といった薄膜化に伴う特性により生じたものではなく、この物質の本質的な物性であることが明らかになった(論文投稿準備中)。 2. Sr濃度変化に対し構造が変化する系であるBa_xSr_<1-x>RuO_3多結晶試料において、これまで明らかにされていなかった6層構造の構造解析を行った。その結果室温では単斜晶C2/c髄、高温で六方晶P6_3/mmc髄であることを明らかにした。また、9層、4層、6層、ペロブスカイト相の相境界と固溶限界を明らかにし、この系のSr濃度に対する相図を確立した(論文投稿中)。 3. Ba_xSr_<1-x>RuO_3と同じペロブスカイト構造をもち、Bサイトに異なる遷移金属イオンを秩序配列させた強磁性酸化物La_<2-x>Bi_xNiMnO_6において構造解析、電気・磁気特性の研究をおこない、Ni-O-Mn間の超交換相互作用とBi-Oの共有結合の競合により磁性と誘電特性が競合すること、見かけの電気磁気特性が向上することを明らかにした。
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