研究課題
磁性と超伝導が共存・競合している磁性超伝導体では超伝導起源と結びついた新しいタイプの超伝導や磁性と深く関係した特有の新しい超伝導現象の発現が期待される。本研究課題の目的は、磁性超伝導体における「磁性と超伝導の共存・競合」の問題の中でも、「どのような形で磁性と超伝導が共存・競合しているか? 」という問題に対し、磁性超伝導体の極低温における磁気測定とバルクの熱測定の実験手段・装置開発と圧力下への拡張により物理現象・状態の解明を目指すことである。UCoGeはT_c〜3Kで強磁性に転移しT_<sc>〜0.8Kで超伝導に転移する強磁性超伝導体である。強磁性超伝導体UCoGeについて、「どのように強磁性の内部磁場と超伝導のマイスナー効果を両立させているのか」を明らかにするため超伝導状態における低温磁化測定によりマイスナー状態や渦糸状態でどのように強磁性が観測されるのか調べた。今回、小型化した高周波発振器を組み込んだ共振回路を用いてインダクタンスを精密測定することにより交流磁化率・磁場侵入長測定を行う装置を作成することに成功した。それに加え極低温のDC磁化測定・比熱測定を行うことにより以下の結果を得た。1. T_<sc>以下のM-H測定がら超伝導状態で強磁性に起因する磁気モーメントを観測した。2. 交流磁化率測定によりマイスナー効果によるシールディングを観測しH_<c2>を決定した。3. T_<sc>以下でDC磁化測定では強磁性が相対的に強く観測され、一方、交流磁化率測定では超伝導が強く観測され相補的な実験ができた。これらの実験からUCoGeはT_<sc>以下で強磁性と超伝導の両方が存在することが実験的に明らかになった。今後、UCoGeの強磁性と超伝導の住み分けや異方性に注目して極低温・圧力下の研究を進める。
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