本研究では、強磁場中で出現する種々の相の発現機構を解明する手がかりを探すために、パルス電磁石を用いた50テスラの磁場領域における比熱測定システムの開発を目的とする。交流比熱測定では、測定周波数ωに対して装置固有の特性周波数ω1(試料と試料セル等周囲環境の間の熱緩和)およびω2(試料内部の熱緩和)をω1<ω<ω2となるように制御する必要がある。本年度は、交流測定におけるパラメータ(試料セルの材料・形状、試料と熱浴の熱接触、加熱方法等)の最適化を行い、プロトタイプの測定システムを構築した。 先ず、試料セルについては、パルス磁場特有の誘導電流発生によるノイズを極力抑えるため、FRPやPEEK等の非金属材料を用いて設計を行った。特にこれらは強度や加工のしやすさから、本装置において有用であることが分かった。また加熱方法としては、試料を、細いワイヤーで空中につり下げたストレインゲージ(ヒーター)に貼り付けることで、試料とヒーター間の熱伝導を向上させると共に、周囲環境との熱伝導を適度にコントロールすることが可能となった。これらを用い、コンパクトで簡便なクライオスタットインサートの設計を図った。 比熱測定の流れとしては、交流電流源で変調された電流によって試料を加熱し試料温度の振動成分をロックインアンプで増幅して計測する。これら自動測定用の制御システムを構築し液体ヘリウムを用いた低温での予備テストを行った結果、ゼロ磁場において適当な測定周波数ωでの比熱シグナルの検出に成功し、磁場中測定への見通しをつけることができた。
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