Ce単体金属の物性は、Ce化合物で現在トピックとしてとり上げられている、加圧にともなう磁気秩序の消失、圧力誘起構造転移、圧力誘起超伝導等といった問題をほぼ全て網羅している。これまでほとんど手つかずであった事が不思議ですらあるが、酸化し易く扱いにくい試料である事、1次の相転移を含み精密な圧力制御が必要であった事が理由の1つとしてあったと思われる。本研究では申請者の高圧下精密物性測定の経験を生かし、Ce単体金属における圧力誘起相転移およびその近傍における、様々な臨界現象の観測を目的とした。 本年度は比較的低圧側(<0.7 GPa)のβ相とその近傍について、電気抵抗や磁気抵抗測定から圧力誘起量子相転移の探索をおこなった。β相は常圧ではT_N〜10Kの反強磁性体であるが、加圧とともにT_Nは下降し、0.7GPaで消失した。また磁気抵抗もこの近傍で急激に消失した。今回は2K程度までしか測定出来なかったが、今後より低温の測定により量子臨界現象の発見を期待したい。 また、同時並行で10GPa以上の超高圧発生が可能な静水圧下精密物性測定装置の開発に成功した。タングステンカーバイド製の対向アンビルを使用し、一般的なダイヤモンドアンビルの数十倍の試料空間を確保したものである。これによって歪みに敏感なCeの静水圧下測定が可能となった。CeNiGe_2を用いた予備測定の後、Ceの電気抵抗測定を10GPaまで行うことができた。5GPa以上のα相において、Tc=1.7K付近で超伝導にともなうゼロ抵抗が観測された。Tcは加圧とともに減少した。今後は磁場中での測定などにより臨界磁場やその圧力依存性の観測に取り組む。
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