研究概要 |
Ce単体金属の物性は、Ce化合物で現在トピックとしてとり上げられている、加圧にともなう磁気秩序の消失、圧力誘起構造転移、圧力誘起超伝導等といった問題をほぼ全て網羅している。これまでほとんど手つかずであった事が不思議ですらあるが、酸化し易く扱いにくい試料である事、1次の相転移を含み精密な圧力制御が必要であった事が理由の1つとしてあったと思われる。本研究では申請者の高圧下精密物性測定の経験を生かし、Ce単体金属における圧力誘起相転移およびその近傍における、様々な臨界現象の観測を目的とした。 本年度は超伝導が発現する5GPa以上のα'相において、低温高圧強磁場の複合極限環境下における電気抵抗率・磁気抵抗測定を試みた。予備測定としてCeAl_2, CePtSi_2など重い電子系化合物について、希釈冷凍機を用いた電気抵抗を行い、特にCePtSi_2においては圧力誘起超伝導を発見した。P>1.5GPaの比較的低い圧力領域で超伝導転移が起こる事から、比熱やNMR等さまざまな物性測定が可能であるのが強みである。今後は詳細な物性測定による多角的な検討を行いたい。 Ce単体金属に関しては、前年度開発したブリッジマン型圧力セルをクライオスタットに組み込む事により、10GPaまでの圧力領域にてTc, Hc_2の測定をおこなった。コヒーレンス長の圧力依存性などについて、通常金属との比較や4f電子が超伝導に及ぼす寄与などの分析をおこなっている。これらの成果は今年度中に学術雑誌に投稿予定である。また今後は半ブリッジマン型圧力セルにコイルを組み込む事によるマイスナー効果測定次交流法による比熱測定などにも取り組み、超伝導に関する各種パラメータや圧力依存性を求める事で、重い電子状態における超伝導の発現機構を明らかにしたい。
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