| 研究概要 |
今年度に得られた研究成果は以下のものである.
1. 昨年度に引続き, 希薄ホール濃度Bi2212単結晶を用いた複素誘電率測定から, 強相関酸化物における絶縁体-金属転移の知見を深めた. 層間方向の誘電率は200K超の温度で急激に増大する. これは, キャリア移動の反映であり, 低温での系の2次元性を示唆していると思われる. そこで, Caサイトを様々な希土類元素で置換した系についても測定を進めたところ, 同様の特性が確認できた. 一方で, 酸素含有量を変えた試料では異なる誘電性が現れた. これらの測定結果を総合すると, 強相関ビスマス酸化物では, 電気伝導性の発達が異方的であること, ただし誘電率には層間の過剰酸素に起因する誘電緩和現象も検出されること, が結論付けられた.
2. ビスマス系銅酸化物であるBi2212の比較参照物質として, ミスフィット構造をもつビスマス系コバルト酸化物[Bi_2Ca_2O_4]_qCoO_2単結晶を選び, 直流電気抵抗率と複素誘電率の測定を進めた。同物質には顕著な強相関効果は存在しないと予想されるが, Bi2212同様, 電気伝導性の発達には異方性が見出された. とくに, コバルト酸化物では, 面内方向の伝導性の変化に対応した形で面間誘電率が増大する. 両者の間には, キャリアが創出される軌道方向に顕著な相違点がみられることもあり, この類似性は興味深い. 今後, キャリア濃度依存性の測定等から, 引続き, この現象の解明を目指す予定である.
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