研究概要 |
本研究の目的は低温用電子ピン共鳴装置に装着して、全空間領域を自由に観測できる2軸ゴニオメータの開発・作製である。24GHzのマイクロ波の定在波が立っている共振器の中に2軸ゴニオメータを挿入するため、マイクロ波の波長(1cm弱)よりも十分に小さい、直径4mmの中に最低でも2個のギヤが必要となり、また非金属で、熱収縮が小さく、誘電損失も小さく、ppmオーダーで磁性不純物を含まで,また格子欠陥等のない電子スピン共鳴に適した高純度な材質を開発する必要性があった。今年度は1年間かけて,巧電社(従業員11名)と中台製作所(従業員3名)との連携によって,どの様な形状の共振器にでも感度をほとんど落とすことなく,不純物の信号も全く出ず,また加工性にも優れた新材料の作製に成功した。本新材料は今後,電子スピン共鳴に限らず核磁気共鳴の装置にも適用できると見込まれる事から,巧電社ではその製品化を検討しているようである。本研究ではその新材料を用いて,中台製作所で2軸ゴニオメータが装着できる1m程度のトップローディング型の液体ヘリウム温度用試料共振器を作製した。実際にその共振器を用いて,本申請者がすでに報告しているIPA-CuCl_3の電子スピン共鳴測定を室温で行った。その結果,現在の2軸ゴニオメータではギヤの遊びが大きいため,2〜3度程度の回転誤差が生じ,実験データの再現性に若干の問題点があることが分かった。この原因は低温時の熱収縮によるギヤの損傷を防ぐために必要不可欠なギヤの遊びである。来年度は標準試料を用いた低温での測定ととともに,ギヤの遊びをより小さくした2軸ゴニオメータの再検討を行う予定である。
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