研究概要 |
高温超伝導の発見やハルデン予想などがきっかけとなり,低次元量子スピン系には大きな注目が集まっている。最近では,実験・理論両面からの精力的な研究により,シンプルな系の理解は大きな進歩を遂げつつある。これからの方向性としては,フラストレーションの存在する系や,複雑な構造を有する系など,従来の直感的理解の及ばない分野に光を当てるべきである。本年度課題において私は古典スピン系と量子スピン系を内包するような低次元フェリ磁性体Cu2Fe2Ge4013に着目し,その磁気励起を中性子散乱実験により測定した。その結果,当該物質中においては,Cu2+に局在する非磁性なスピン,ダイマーを媒介として,Fe3+に局在するS=5/2スピン間に磁気相互作用が働いていることを明らかにした。陰イオンを媒体とした超交換相互作用や,自由電子を媒体としたRKKY相互作用などが磁気相互作用としては有名であるが,本研究においては,スピン系を媒体とした相互作用の存在を実験的に明らかにした,という点で学問的意義があると考えられる。
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