研究課題
分子性導体・遷移金属酸化物で起こる金属-絶縁体転移を、核磁気共鳴で得られる局所帯磁率によって微視的に調べた。本年度は、3つの異なる電荷秩序系に着目して研究を行った。(i)電荷秩序を起こす擬一次元導体であるバナジウムブロンズおいてNMR測定を行い、キュリーワイス的なスピン帯磁率をもつVサイトとパウリ常磁性的な挙動を示すサイトを微視的に観測した。さらに8.8GPaの高圧下NMR測定を成功させ、超伝導相近傍の金属相ではすべてのVサイトがパウリ常磁性的になることを示した。遍歴性と局在性が空間的に共存している擬一次元導体から三次元的なフェルミ液体へと圧力誘起のクロスオーバが起こることで超伝導が出現することが分かった。また、反強磁性電荷秩序相が超伝導相に隣接することを示した。(ii)軌道・電荷・スピン秩序に対するフラストレーションのあるスピネル型バナジウム酸化物において、金属-絶縁体転移を^<51>V NMRと^<27>Al NMRによって微視的に調べた結果、理論的に提案されていた非磁性バナジウム七量体と磁性サイトが共存していることを実証した。(iii)分子性導体α-(ET)_2I_3の高圧下で現れる零ギャップ状態において^<13>C NMR測定を行い、ギャップレスのスピン励起および低温でのスピン帯磁率の消失を観測した。近年、ナローギャップ半導体における量子輸送特性が注目されているが、本研究によってバルクの磁性が初めて明らかになった。前年度は、様々な基底状態を示すモット絶縁体からのモット転移と超伝導の特徴を明らかにしたが、以上の本年度研究によって、様々な基底状態を示す電荷秩序相からの金属-絶縁体転移において、格子の幾何学的構造や軌道自由度の有無によって特徴的な量子状態へ転移することが明らかになった。
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http://i-ken.phys.nagoya-u.ac.jp/