研究課題
本年度は、まず本課題の最終的な目標である「外力で駆動された非平衡定常状態」の前段階として、「平衡状態に近づく非平衡緩和ダイナミクス」についての研究を行った。温度が低く熱ゆらぎが小さいとき、系は熱平衡状態としてある秩序状態(磁束格子では渦糸の結晶)をとるが、そこから急に高い温度環境に移されると、新しい温度に応じた平衡状態へと緩和してゆく。このとき系の不純物などの乱れがもたらすピン止め効果は、系のダイナミクスを阻害し、熱活性型の非常に遅い緩和をもたらす。このような状況では、通常のクリーンな系で見られるような臨界現象のスケール不変性は存在しないため、従来の研究で用いられてきた、べき乗則に基づくスケーリング解析で相転移現象を調べることはできない。我々はスローダイナミクスにも適応可能な一般化されたスケーリング解析法を新たに考案した。さらに、ランダムポテンシャル中の弾性体モデルで数値シミュレーションを行って構造因子を評価し、新しいスケーリング則が適用可能であることを確かめた。また、この方法により緩和が遅く実際に平衡状態を実現することが不可能な場合でも、平衡状態の相関関数を評価する手段を確立した。この方法は現在研究中の非平衡定常状態においても強力な解析手段となる。磁束格子のような2次元結晶のすべり運動を調べるためには、外力に平行な方向と、垂直な方向の変形自由度を取り扱う必要がある。れは従来の位相1変数モデルでは不可能である。我々は2つの基本並進ベクトルに対応した2変数の位相場を導入することで、現在この問題に取り組んでいる。位相場モデルは理論・数値的に取り扱いの易しいという利点があるが、これまでは1変数のモデルしか取り扱われてこなかった。
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Physical Review B 77
ページ: 064207(1-7)
Topological Aspects of Critical Systems and Networks, World Scientific Publishing
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Journal of Physics Condensed matter 19(2007)p. 19
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