代数幾何の手法を用いて有限自由度を持つ可積分系の研究を行い、今年度は大きく分けて以下の二つの成果を得た: 1.トロピカル幾何の枠組みで可積分なセルオートマトン(超離散Toda格子、箱玉系)を記述することに成功し、代数幾何的な可積分性の概念をトロピカル幾何の世界に広げるという本研究課題の第一歩を踏み出した。特に、超離散Toda格子の一般等位集合があるトロピカル曲線のJacobi多様体と同型であることを予想し、低次元の場合の証明を与えた。この研究は大きな注目を集め、日本数学会2007年度総合分科会で特別講演を行った。 2.超楕円曲線をスペクトル曲線に持つ代表的な可積分系であるMumford系について、スペクトル曲線が最も退化した場合の詳しい解析を行い、この特別なスペクトル曲線に付随する等位集合は一般化されたJacobi多様体のアフィン部分と同型であることを示した。 さらに、この系とKdV方程式の関係からKdV方程式の有理解と一般化されたJacobi多様体との関係を明らかにした。この研究のため2007年11月から12月にかけてPoitiers大学(フランス)に約二週間滞在し、同大学のVanhaecke教授と活発な議論を行った。
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