本研究課題の目的は、地球惑星科学や粉体工学などにおける重要な未解決課題である高密度粉体のレオロジー特性を第一原理的に解明することである。これまで高密度の粉体レオロジーは主に土木工学的な経験則が知られているのみであり、関与する要素を出来る限り制御して単純な法則を抽出するという物理的なアプローチは皆無であった。 このような状況を踏まえ、平成19年度においては、系統的な制御下におけるレオロジーと摩擦特性を粒子シミュレーションによって現象論的に確立した。より具体的には、粉体工学分野で確立された相互作用モデルを用いて定常せん断シミュレーションを実行した。とくに空間不均一構造を排除し、一定体積条件下においては密度とせん断率を、一定圧力条件下においては圧力とせん断率を変数として、レオロジー特性を系統的に解明した。 主な結果は、1.粉体層の動摩擦係数はせん断率に比例するある無次元数(Savage数)のみによって記述され、正の非整数ベキ依存性を示す。2.一定体積条件下では、ある臨界密度を境として降伏応力が発生する。これはジャミング転移と呼ばれる相転移に起因している。3.臨界密度においてはせん断応力・圧力ともにせん断率について非整数のベキ的依存性をもつ。4.様々なレオロジー特性が臨界現象的なスケーリング則に従う。 これらの結果は、高密度粉体のレオロジーが、ジャミング密度という臨界点の動的特性から理解できる可能性を強く示唆しており、高密度粉体レオロジーが臨界現象の理論を用いて統一的に理解できることを期待させるものである。
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