研究概要 |
近年,進化生物学から統計物理学におよぶまで進化ゲームをネットワーク上に拡張したモデルの研究が行われるようになっている。特に協力行動がどのようなネットワーク構造において進化しやすいかという問題が議論されている。この問題は,古くは1992年のNowakとMayによる格子における囚人のジレンマゲームの研究に始まり,ここ数年で様々なネットワーク上に拡張され著しく発展しつつある。しかし,既存研究のほとんどは数値計算に頼ったものでネットワークのトポロジカルな性質の影響は理論的に解明されていない。そこで本研究では次数分布とクラスタリング係数に着目してその影響を解析的に調べた。次数とはネットワークの各ノードが持つリンクの数であり,クラスタリング係数とはーつのノードに着目したときそのリンク先のノード間にもリンクがある比率のことである。これらの2つの指標は近年の複雑ネットワークの研究で特に重要とされているものである。次数分布の分散が大きいことはネットワークの非一様性(不平等性)に対応し,クラスタリング係数が高ことはネットワークの凝集性の高さた対応する,ペア近似を駆使することで次数分布の分散が大きくなることはネットワーク上の拡散と,クラスタリング係数が大きくなることは次数が小さくなることと等価な効果をもたらすことを示すことができた。ゲームの利得行列として一般的な2戦略対象ゲームを用いたので,この結果は囚人のジレンマやスノードリフトゲームなどのゲームにそのまま適用できる。これらの場合,次数分布の分散が大きくなると協力行動は抑制されることが示される。クラスタリング係数の影響は場合による。
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