本年度は、引き続き非平衡条件下での構造形成に関して研究を行った。共同研究による大規模シミュレーションにより非平衡条件下での気泡核生成・噴霧流転移に関連するマクロ記述に対するミクロな状況がほぼ明らかになり、構造の特徴づけ、その振る舞いの分類、およびパラメーターに対する依存性のほぼ完全な理解に成功した。この成果は、論文としてまとめられ、既に査読を通りPhysica Aに掲載予定である。H21年度中の出版には残念ながら間に合わないが、本研究の大きな成果の一つとしてあげられる。 また、昨年度に引き続き熱伝導状態の非平衡熱流分布に関する研究も、非平衡状態に関する基礎的な理解のために行った。具体的には微視的な古典粒子モデルの熱伝導状態を計算機上で再現することにより熱流分布のミクロ分布がどうなっているかをより詳細に調べた。今年度は、解析的な計算との比較も行い、昨年度得られた「定常熱伝導状態での分布では、高温側から低温側に向かう熱流(正の熱流)と、低温側から高温側に向かう熱流(負の熱流)でそれぞれ見かけの温度が違い、正の熱流の分布は、熱流分布を測定している部分の温度より高い温度の平衡分布に漸近し、負の熱流の分布は、より低い温度の平衡分布に漸近すること」が、今まで知られている結果と矛盾が無いことを明らかにした。 さらに、この熱流分布の観測可能性を調べるために、熱伝導状態にさらした「粒子温度計」の性質を詳細に調べることで、熱泳動現象のミクロな理解につながる成果を得た。この結果は国際会議で発表し、残念ながら本年度中の出版には間に合わないが、現在論文にまとめているところである。
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