研究概要 |
本年度は、開発したシミュレーターを用いて高いキュリー温度を持つ希薄磁性半導体の作成方法として同時ドーピング法の可能性を検討した。 希薄磁性半導体は一般に溶解度ギャップを持つ系で熱平衡状態では相分離をおこし高濃度領域を作る傾向がある。相分離を抑制し母体半導体に遷移金属を高濃度に添加することで高いキュリー温度の実現が可能となるが、そのために格子間不純物(Li, Na, Be, Mg, Cu等)を磁性不純物と同時に添加する同時ドーピング法が有効と考えられる。特にGaMnAsに注目し、Mnのみの添加の場合と、格子間不純物を同時添加した場合について混合エネルギーをKKR-CPA-LDA法を用いて計算し同時添加により混合エネルギーが大きく減少し、Mn濃度の低い領域では負の値となることを示した。これは同時ドーピングがMnの高濃度均一添加に有効であることを示している。 しかし、同時ドーパントはホールの補償により強磁性を抑制する働きがあるので、モンテカルロシミュレーションにより格子間不純物の拡散をシミュレートし、熱処理による格子間不純物の除去法をデザインした。とくに格子間Liは拡散障壁が低く、また磁性不純物との相互作用もそれほど大きくないだめ除去が比較的容易であり、効率的な同時ドーパントとして非常に有望であることがわかった。
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