本研究では液体を含む粉体ペーストの変形・破壊過程とレオロジー物性の関係を明らかにすることを目的として実験と理論研究を行ってきた。昨年度までに乾燥収縮によるペーストの一様な薄層の亀裂形成の実験を行って亀裂成長速度と応力を測定し、破壊前に層内に発生する引張応力が乾燥速度依存性を持たないのに対して亀裂速度は乾燥速度とともに増加することを実験的に見出した。またそのような依存性が亀裂成長と塑性緩和の競合によって説明できることを理論解析により示した。 本年度は提案した数理モデルを降伏応力が無視できない場合に拡張して数値計算を行い、降伏応力がOの場合の解析解と一様解をもとに亀裂速度を与える式が推定できることを示した。これらの成果は昨年までの結果と併せて国際会議・海外の大学でのセミナー等での発表と論文による報告を行った。また指導する大学院生とともにインベージョンパーコレーションをベースとする数理モデルを作り、線形弾性体と乾燥過程の相互作用を調べた後、粉体を想定した3次の非線形弾性への拡張を行った。数値解析の結果、柔らかいペーストでは破壊と乾燥が互いに促進し合うことがわかった。 実験は他の研究者の装置を借りて行う予定であったレオロジー測定が装置の納品の遅れのため本年度は実現できなかったが、実験装置の改良を行った上で数種の粉体に対して亀裂速度の測定を行い結果を得ることができた。研究期間は本年度までであるが、これらの成果に関しては今後得られる測定結果をもとに議論した上で報告していく予定である。
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