昨年度に引き続き平成21年度もイオンビーム・液体衝突の素過程を探ることを目的とし、キャピラリを用いたイオンビーム実験を行った。イオンビームの細径化にとってガラスキャピラリは簡便な方法であるが、独自にメタルキャピラリを用いた実験も行った。これはプロトンビームのエネルギーをMeV程度まで加速すると、イオンビームがガラスキャピラリの薄い壁面を透過してしまうという問題点があったためである。そこで、ガラスキャピラリとメタルキャピラリから引き出したイオンビームのそれぞれの出射ビームの素性を銅の細線を用いたPIXE分析を応用することにより行った。その結果、ガラスキャピラリからのイオンビームにはハロー成分と呼ばれるガラス透過成分が相当量含まれていることが分かった。その反面メタルキャピラリではコア成分と呼ばれる素性の良い成分のみであることがわかった。本研究の目的である二次粒子測定をきちんと行うためには、ガラスキャピラリを透過したイオンビームの素性が重要であるので、メタルキャピラリを用いることが望ましいと言える。なお、この結果については現在Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B誌に投稿中である。 二次粒子収量測定に関しては二次粒子測定を行うための飛行時間分析装置の開発が終わり、現在予備実験中である。現在のところ予備実験としてイオンビームのキャピラリを用いた収束細径化、検出器の校正、真空排気機構のチェック等が終了しており、これから液体標的の実験を行っていく予定である。研究実施計画からは遅れてしまったが、素性の良いイオンビームが得られるようになったことが平成21年度の特筆すべき成果であり、定量的な二次粒子収量測定に役立つものとなる。
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