研究概要 |
原子分子の多重光電離ダイナミクスを複数の放出電子の間のエネルギー・角度相関分析で探るべく,磁場を使用した新規電子分析器の設計を行った.研究代表者の所属グループが保管する真空槽を本研究へ活用する方針とし,飛行時間分析器全体のデザインを決定した.その後,磁場シミュレーションソフトを用いてイオン化領域近傍の補助コイル配置について検討し,一定磁場を実現するために電流値・コイルの配置・形状の最適化を行った.また,本研究と技術的にも密接に関連する光多重電離過程の実験的研究(磁場を用いた飛行時間型分析器による多電子計測)をPhoton Factoryにて実施し,放射光の時間構造を用いた電子計測技術を検討するとともに,原子分子の共鳴光多重イオン化について新たな知見を得た.放射光の時間構造を利用した電子の飛行時間分析では,ナノ秒精度の同期・計測回路の構築が必須であるが,Photon Factoryにおける実験を基にして本研究で利用する計測回路をデザインした.原子分子の共鳴光多重イオン化の研究成果に関しては,SPring-8における光電子分光,独国放射光施設における磁場型分析器を用いた多電子計測の実験結果とあわせて,内殻領域の分子ダイナミクス解明への新たなアプローチとして論文にまとめている.また,原子分子の多重電離の後続過程については,放出電子と生成イオン種を同時分析する方法も有効である.研究代表者は分子科学研究所の放射光施設にて,内殻領域の分子多重電離とその後続過程を解明する実験的研究にも取り組み,電子的脱励起と分子解離の競合過程,多電子放出による準安定分子イオン生成について知見を得た.
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