研究概要 |
H19年度は、トムソン散乱計測のためのCCD計測システムの高度化を実施した。これは、レーザープラズマからの散乱光をビームスプリッタで2つに分け、異なる波長領域(800nmと500nm)のバンドパスフィルターをそれぞれに設置することにより、空間プロファイルとおおよその波長域を調べることができる装置である。また、散乱光の強度は実験パラメータにより強度が大きく異なるため、遠隔でフィルター強度を変えることができる装置をそれぞれの計測ラインに設置し、データ収集の効率化を図った。このシステムを実際に3TW,20TWレーザーをガス中に集光し散乱光を取得する美験を行った。その結果、散乱光を実際に観測できることを示した。しかし、レーザー光がプラズマ中で軸ずれを起こすことなどに起因する像のぼやけが問題となることがわかった。これは散乱光強度を求めるには問題とならないが、どこで強い散乱が起こっているかを知るためには解決せねばならない。これは、イメージリレーレンズをリモートで制御することで対処する予定である。迷光は画像の端部には見られるものの、画像中心部の関心領域ではそれほど問題とならないことがわかった。これらにより、当初の計画通りに散乱光強度を評価するためのシステムをほぼ構築できる見込みであることが示せた。これらに加えて、さらに、散乱光のスペクトルを調べるために、分光器を用いて詳細な計測も行った。この結果、20TWのレーザーを集光する実験を行った際に、入射レーザー光の波長から赤方偏移した散乱光を観測した。これは非線型なトムソン散乱から予測される、レーザー強度に依存した波長シフトの可能性がある。このレーザー強度による波長シフトを明確に観測した例はないため、現在、解析及び詳細な実験を計画中である。
|