本研究の主な目的は新しいコインシデンス測定法の開発である.平成19年度には予備実験を行い、その結果を基にして新しい検出器を設計し、製作した.予備実験の結果については国内外の学会にて発表した.予備実験の結果を基づいて平成20年度のSPring-8放射光施設マシンタイムを申請した.具体的な研究結果としては、まずH_2Oの01s励起による中性水素原子の生成について調べた.01s電子が高いリュードベリ状態に上がると長寿命の励起状態Hが生成することがわかった.この過程のダイナミックスを探るために、飛行時間の測定及びイオンとの同時測定を試みた.メタステーブル・イオンのコインシデンス測定はN_2での同様の測定と比較した.飛行時間の測定はSpring-8の施設以外では不可能である.結果は平成20年度中にまとめて論文発表をする予定.蛍光とイオンの同時測定においては、Arの2p励起付近の崩壊過程を調べた.実験法の有効性を証明したが、現在の装置の検出効率では寿命別測定はできなかった.より詳しいデータを測定するためにはさらに検出効率の高い検出器が必要だとわかったので新しい検出器を設計し、製作した.予備実験の結果についてはヨーロッパの原子・分子学会「ECAMP」および日本放射光学会年会にてポスター発表した.平成19年度にはSpring-8放射光施設で18シフト(6日間)のマシンタイムを利用した.予備実験の結果を踏まえて、平成20年度のマシンタイムを申請し、計24シフト(8日間)が交付された.
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