研究概要 |
本年度の研究目的は19年度中に作成した検出器を利用して気体中の水分子の01s内郭光励起に伴う中性H原子フラグメントおよびそのフラグメントが基底状態に脱励起して蛍光を発する過程について情報を得ることである。20年度中にSpring-8のBL27SUにおいて24シフト(計8日間)のマシンタイムを利用した。実験の結果のまとめは以下の通り。 1. 水分子の01s内殻励起後の崩壊過程で生成されるイオンと中性励起状態フラグメントの同時測定(コインシデンス測定)実験を行った。予備実験で利用した窒素分子では一つの崩壊ルートしか存在しない(N+/N*)ことが分かっていたので、水分子の場合はおそらくH*:OH+だけのコインシデンス信号を測定できるだろうとの予想に対し、H*:OH+,H*:H+,さらにH*:O^<2;>の信号も測定できるという、有意義な結果になった。 2. 前年度で作製した検出器にフィルターを加えて、ライマンアルファ(H 2p->1s)の蛍光測定を行った。放射光のパルス性を利用し、水分子崩壊後のHの励起状態分布について情報を得た。H原子の励起状態のそれぞれの寿命と崩壊確率・崩壊ルートが明確にわかっている為、2p->1sの蛍光だけを測定しても、より高励起状態の生成も測定できる。放射光の吸収で励起される1s電子が上がるリュードベリ状態の主量子数が高ければ高いほど、長い寿命の蛍光が測定されることがわかった。つまり励起状態Hの電子が内殻励起時の「情報」を概ね保つということがわかった。 これらの結果については海外で行われた二つの国際会議にてポスター発表を行った。さらに国内会議においてポスター発表(3件)及び口頭発表(2件)を、20年度中に行った。
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