研究課題
本研究は、計算機実験を援用して、溶液散乱データに基づく蛋白質の動的構造をモデリングし、低分解能実験データの解析法を開発することを目的とする。本年度は、原子レベルの分子シミュレーション結果から、生体分子の中性子・X線溶液散乱データを計算するソフトウェアの開発をおこなった。このソフトウェアを用いて、T4リゾチーム、ABCタンパク質MalKの溶液散乱データI(Q)を解析し、I(Q)には蛋白質立体構造ダイナミクスの寄与が大きいことが明らかになった。このような動的構造の寄与は、蛋白質の溶液散乱データ解析では通常無視されている。これらの解析結果を基に、溶液散乱データから抽出すべき変数の検討を現在おこっている。具体的には、原子レベルの分子シミュレーション結果から計算される溶液散乱データI(Q)を記述するために、最低限必要なパラメータを選び、生体分子システムを粗視化する。特に、中性子溶液散乱データを解析する際には、水素原子の静的・動的構造情報を上手く取り込んで粗視化する必要があることを、現在までに明らかにした。これは、ほとんどの原子散乱長が正であるのに対して、軽水素の原子散乱長が負であるためである。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件)
日本結晶学会誌 50
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Journal of Physical Chemistry B 112
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Biophysical Journal 94(In press)(掲載確定)
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