本研究では、空間的制限下における界面活性剤リオトロピックラメラ相の流動誘起型ラメラ-オニオン構造転移ダイナミクスを実験的に調べ、空間拘束下におけるソフトマターの秩序相形成の物理的要因を明らかにすることを目的とした。本年度は、(1)空間拘束スケールを変えることが可能な平行平板シアセルを作成し、流動小角光散乱装置の改良を行った。また、アヴァランシェフォトダイオードを受光部とした光子相関計を作成し、動的光散乱装置をシアセルに組み込んだ。(2)空間拘束効果を検証するための基礎データ収集として、ずり速度変化によるオニオン構造変化過程を粘弾性測定により調べた。オニオン構造は印加ずり速度によって、オニオン構造が連続的に成長する領域と、オニオンが破壊されラメラ相を経た後にラメラーオニオン構造転移を経由し成長する不連続成長領域の2つに分類することが分かった。この連続-不連続成長過程の閾値は、各ずり速度での膜の曲げ弾性エネルギー差によって決定される。(3)また、二分子膜の波うちゆらぎと流動場との動的結合現象を明らかにする目的で、界面活性剤二分子膜にトリブロックコポリマーが会合した複合二分子膜系のラメラ-オニオン構造転移過程を粘弾性測定により調べた。低ポリマー濃度ではオニオン相形成は促進され、他方、高ポリマー濃度では抑制された。低濃度域ではポリマーの親水鎖間の排除体積効果により二分子膜の波うちゆらぎが増長されるためオニオン形成が促進されるが、高濃度域では、排除体積効果が強く膜の曲げ弾性率が補強されるためにオニオン形成が抑制されたものと考えられる。次年度は、作成した流動光散乱装置を用い、上記実験(2)(3)の構造転移ダイナミクスに関する情報を蓄積し、ポリマー濃度と空間拘束スケールの変化による波うちゆらぎへの影響を明らかにする予定である。
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