界面活性剤ラメラ相が示す流動誘起型ラメラ-オニオン転移は、ブロックコポリマーやコロイド粒子などのゲスト成分の混合により異なる転移挙動を示すことが期待される。二分子膜に対するゲスト成分としてブロックコポリマーを混合した系では、二分子膜に会合した高分子鎖間、高分子-二分子膜間の排除体積効果と実効膜厚の増加のため二分子膜は硬化し、オニオン相形成は阻害されると考えられ、他方、コロイド粒子添加系では二分子膜がコロイド粒子表面に配勾するためオニオン相形成が促進されると考えた。この考えに基づき(a)トリブロックコポリマーPluronic(PEO-PPO-PEO)を界面活性剤と混合した複合二分子膜系ラメラ相と、(b)異なる粒径のシリカ微粒子を添加したコロイド混合ラメラ相について、流動誘起ラメラーオニオン転移挙動を粘弾性測定により調べた。まず複合二分子膜系ラメラ相について、低高分子濃度ではオニオン相形成は促進される一方、高濃度ではオニオン相形成が抑制されるという特異な結果を得た。低濃度域ではポリマーの親水基鎖間の排除体積効果により二分子膜の波うちゆらぎが増長されるためオニオン形成が促進されるが、高濃度域では、排除体積効果が強く膜の曲げ弾性率が補強されるためにオニオン形成が抑制されたと考えられる。コロイド混合ラメラ相では、オニオン相形成の臨界ずり速度はコロイドの粒径、濃度に依存せず一定であった。ところが、臨界ずり速度以上でのラメラ-オニオン転移過程において、オニオン相形成の開始時間は粒径、濃度に依存し、粒径の大きい程、且つ高濃度ほどオニオン相形成が促進されることが分かった。ゲスト成分を用いることにより二分子膜の物理特性を選択的に制御することが可能であり、ゲスト成分の添加効果を通して秩序相形成のメカニズム、構造決定原理の解明に役立つと考えられる。
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